連句(2)


 『座』の楽しさを味わえる連句です。ご覧の上、ご感想などお寄せ頂ければ幸いです。



『白蓮』の巻(第19回国民文化祭ふくおか2004・文部科学大臣奨励賞)へ

『無心といふは』の巻(第19回国民文化祭ふくおか2004・苅田町議会議長賞)へ

『万緑』の巻(第20回国民文化祭ふくい2005・福井県教育委員会賞)へ

『忽ちに』の巻(第24回国民文化祭しずおか2009・静岡県議会議長賞)へ



 
 『白蓮』の巻
 

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 半歌仙 『白蓮』の巻            田岡 弘 捌

     白蓮のそよぐや戦なくならず田岡  弘
      波紋のこして消ゆる翡翠多村 遼
     胸中に秘策をひとつ温めて
      バッターボックス包む歓声
     野も山も月のしづくに煌けば
      新酒の香りことのほか良し
  ウ  移ろひの秋を異国に惜しみつつ
      触れる手と手にはしる衝撃
     永遠の愛を紡いでゆく二人
      終り気になる推理小説
     懸案の拉致の解決ままならず
      玄海はるか浮かぶ島々
     月冴えて御仏の顔おだやかに
      恩師の偉業しのぶ襖絵
     客席にカーテンコールいつまでも
      浮かれし猫のよぎる裏町
     うたかたの今生なれば花に酔ひ
      朝寝の夢にふるさとの母

 首 平成15年7月25日  尾 平成15年8月21日   於(FAX音) 

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 『無心といふは』の巻


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 半歌仙 『無心といふは』の巻            田岡 弘 捌

     綿虫や無心といふは難しく田岡  弘
      静寂の果てに眠る山並多村 遼
     出し抜けにドアを敲くは誰ならん
      プロローグにはチェロの独奏
     叢雲を解き放たれしけふの月
      犬の迎へる木犀の駅
  ウ  碧い瞳も秋の祭の行列に
      片言なれど愛の告白
     願はくば時よ止まれと抱きあひ
      うつつに返る警策の音
     フセインの夢の終りし穴の中
      地平線へと一筋の道
     月涼し秘蔵の酒を囲みゐて
      軒の忍に想ふいにしへ
     神さびる香椎の宮をおとなへば
      鷹のやうやく鳩と化す頃
     大河いま滔々として花筏
      画布いっぱいに満ちてゆく春

 首 平成15年11月21日  尾 平成15年12月22日   於(FAX音) 

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 『万緑』の巻


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  歌仙 『万緑』の巻            田岡 弘 捌

     万緑や地図には赤き現在地 田岡 弘 
      声をかぎりと鳴くは初蝉 多村 遼 
     手づくりのパイの思はぬ出来映えに
      ベストセラーは読みかけのまま
     天心を皓々として望の月
      小鳥放てば風になるらん
  ウ  爽やかにさざなみ寄せる渚には
      会釈を交はす妙齢のひと
     片恋の痛みの残る日記帳 
      涙の痕にいつか微笑み
     ひたすらに戦禍の村に井戸を掘り
      神に祈らん世界平和を
     月冴えて歓喜の歌を高らかに
      スノータイヤの威力抜群
     ブーム追ふ秘湯めぐりのカメラマン
      心にとめる一瞬の技
     初花のあたり仄かなにほひして
      何にたとへん春のあけぼの
 ナオ  若駒に少年の夢果てし無く
      自由自在にタイム・スリップ
     古文書の謎にすっかり嵌り込み
      壁の染みさへ物の怪に見ゆ
     泣く子にはとても叶はず買う金魚
      雨宿りして過ごす夕立
     ヨン様にやまとなでしこ奪はれて
      脇目も振らず愛はひとすぢ
     抱き合ふただそれだけで幸せと 
      不意に扉を敲くのは誰
     雲間より洩れゐる月の永平寺
      坂の途中で拾ふひょんの実
 ナウ  川土手に聴くフルートに秋更けて
      キャッチボールも懐かしき父
     SLの窓に景色の移りゆき
      旅にしあれば憂さも吹っ飛ぶ
     けふよりも若き日はなし花に酌み
      遥か彼方へ霞む連山

 首 平成16年7月1日 尾 平成16年8月2日  於(インターネット) 

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 『忽ちに』の巻
 

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  歌仙 『忽ちに』の巻            田岡 弘 捌

     忽ちに風の中なる牡丹かな 田岡 弘 
      静寂を破る夏の鶯 城 依子 
     デッサンは思ひのままに伸びやかに
      背なになじみしリビングの椅子
     皓々と湖を照らして望の月
      音も立てずに穴に入る蛇
  ウ  木の実降る道はいつしか行き止まり
      恥ぢらひながら交はすくちづけ
     夢うつつうすむらさきの閨の内 
      踏み損なつてしまふブレーキ
     アメリカに端を発した株下落
      酒の力で憂さを晴らさん
     寒念仏月の明かりに過ぎ去りて
      犬がとぼとぼ底冷えの街
     友を待つことにも慣れてティールーム
      スローライフもいつか身につき
     霊峰の富士を遥かに花の雲
      茶摘みの唄の流れ来る午後

 首 平成20年5月18日 尾 平成20年7月14日  於(インターネット) 

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