連句(1)


 『座』の楽しさを味わえる連句です。ご覧の上、ご感想などお寄せ頂ければ幸いです。


『合歓の花』の巻(第11回全国連句新庄大会・優秀作品)へ

『阿吽は凛と』の巻(第2回全国連句いなみ大会・実行委員会委員長賞)へ

『燃ゆるいのち』の巻(第15回国民文化祭ひろしま2000・文部大臣奨励賞)へ

『雪どけや』の巻(第16回国民文化祭ぐんま2001・群馬県実行委員会委員長賞)へ

『湖のいはれ』の巻(第17回国民文化祭とっとり2002・文部科学大臣奨励賞)へ

『木歩の忌』の巻(第18回国民文化祭やまがた2003・国民文化祭実行委員会会長賞)へ

『果てはいづこや』の巻(第18回国民文化祭やまがた2003・山形県連句協会会長賞)へ

『冬瓜や』の巻(第57回芭蕉祭献詠連句(2003年)・入選)へ



 
 『合歓の花』の巻
 

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 半歌仙 『合歓の花』の巻            田岡 弘 捌

     遠山は雨に煙りて合歓の花 田岡 弘 
      店の床几につかふ絵扇 西岡恭平 
     宗匠のやおら矢立を取り出して
      スランプらしく乾く墨壷
     鍵っ子のジャングルジムに夕の月
      祖母てづからの麦とろの膳
  ウ  赤蜻蛉風に泊まりて流されず
      閉ぢし瞼にそっと口吻け
     キューピッドあと一押しともどかしく    
      ホームページに初孫の顔
     不況下に三億の籤夢を見て
      独り鰭酒ちびりちびりと
     錆び付きし螺旋階段月しづか
      誰が撞くのか寺の鐘の音
     手を繋ぎお化け屋敷を走り抜け
      遥か天まで昇る連凧
     王将の駒にひとひら花の舞ひ
      海市ふはりと波に煌く

 首 平成11年5月5日 尾 平成11年6月23日  FAX音 

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 『阿吽は凛と』の巻
 

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  歌仙 『阿吽は凛と』の巻            田岡 弘 捌

     狛犬の阿吽は凛と寒に入る 田岡 弘 
      触れてひらりと溶けし凍蝶 西岡恭平 
     這い這いができし満座の賑ひに
      はや栴檀と声もかかれり
     望の月野外ライブの谺して
      紙飛行機を競ふひつぢ田
  ウ  菊膾藍の小鉢にはんなりと
      ミステリアスな君に惹かるる
     ふくよかな乳房フェロモン溢れさせ 
      厚底靴で外八文字
     「暫」の元禄見得にどっと沸き
      浴衣立て膝王手飛車取り
     玻璃越しの月にグッピー目を覚まし
      ライフスタイル決まる恩給
     掘り出しとみごと贋物掴まされ
      変体仮名に迷ふ古文書
     花のしたピエロひそかに涙して
      龍の連凧宙に昇りぬ
 ナオ  母からのふるさと便は螢烏賊
      鑿音絶へぬ欄間彫る街
     我輩はひたすら眠る猫である
      雲垂れ込めし昏き裏窓
     しんみりとオンザロックで除夜の鐘
      気付かれぬよう宝船敷く
     合理化にこころ優しき妻ならん
      東尋坊で諌む心中
     今もなほ逆巻く涛の轟きぬ 
      浪漫銀髪の混じる級友(ロマンスグレイ)
     一村は静かに更けて月岨に
      鴉も残す木守の柿
 ナウ  美術展歓喜を謳ふ志功あり
      天衣無縫に舞へる御佛
     吟行へ三々五々と歩をすすめ
      師のぬくもりの万年筆(ファウンテンペン)
     はらはらとランドセルにも花零れ
      日本丸のはらむ春風

 首 平成11年12月8日 尾 平成12年3月9日  FAX音 

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 『燃ゆるいのち』の巻
 

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 半歌仙 『燃ゆるいのち』の巻            田岡 弘 捌

     落ちてより燃ゆるいのちや山椿 田岡  弘 
      水音ぬるむ柔らかき風 大鹿 節子 
     春日傘咲く店先の華やかに三橋 早苗
      缶蹴りの子らどっと駆けゆく佐々木栄一
     切り通し抜けて明るき月の海西岡 恭平
      鷺の舞ひ降り遊ぶひつぢ田
  ウ  手の平にのせて林檎の香の仄か
      解読すれば愛の告白
     若しかして彼女やっぱり宇宙人?    
      枝に懸かれる天の羽衣
     折鶴に原爆のなき世を祈り
      金魚眺むる母は寡黙に宇野 恭子
     月代にひそか夕顔ひらき初め
      ハードロックの洩れてくる窓
     スコッチの琥珀心に染み込みて
      時効に霞む狐目の貌
     花燦々倭座りの御ン秘仏
      囀り満ちてまほろばの里

 首 平成12年2月 5日  尾 平成12年4月13日   於(桜ん慕工房&FAX音) 

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 『雪どけや』の巻
 

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 半歌仙 『雪どけや』の巻            田岡 弘 捌

     雪どけや山に木のこゑ水のこゑ田岡  弘
      稜線遥か雲に入る鳥西岡 恭平
     待ち兼ねし合格通知受け取りて佐々木栄一
      笑ひの絶えぬ団欒の窓大鹿 節子
     天心にかかりて月の独り言三橋 早苗
      息を弾ませ萩こぼる道
  ウ  麹の香べったら市に漂ひし
      橋のたもとに交はすくちづけ
     坂いくつ越えて来たのか共白髪
      ひととき憩ふ榛名・嬬恋
     冬の湖すべりゆく帆の遠ざかり
      不況のままに新世紀へと
     お百度の背なに涼しく残る月
      秘蔵の冷酒オンザロックに
     カラヤンもJAZZも演歌もみんな好き
      猫のじゃれつく毬は弾みて
     江戸っ子は法被が晴れ着花の宴
      どいたどいたと昇る連凧

 首 平成13年2月12日  尾 平成13年3月31日   於(桜ん慕工房&FAX音) 

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 『湖のいはれ』の巻
 

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 半歌仙 『湖のいはれ』の巻            田岡 弘 捌

     囀や湖のいはれは碑に田岡  弘
      鯉の背色の透ける薄氷三橋 早苗
     しゃぼん玉幼き夢のふくらみて佐々木栄一
      語る抱負に瞳かがやく西岡 恭平
     月の夜のバンドネオンは佳境へと
      ロゼのワインの酔ひの爽やか
  ウ  直木賞作家を囲む文化の日
      三十五歳いまだ独身
     魔女だって恋の涙は流します
      ブルカに隠す忍従の時
     顔見世の楽屋裏まで華やかに
      織機の音のひびく横町
     心太掬ひて月の揺らめけば
      思はず足を止めるくちなは
     札付きのワルもすつかり好々爺
      古刹めぐりは友に従ひ
     爛漫の伯耆大山花の客
      蒼穹はるか光る春潮

 首 平成14年1月26日  尾 平成14年3月10日   於(桜ん慕工房&FAX音) 

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 『木歩の忌』の巻
 

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 半歌仙 『木歩の忌』の巻            田岡 弘 捌

     青柿のままに落ちたり木歩の忌田岡  弘
      片割月を揺らす池の面多村  遼
     村芝居終へたる人の賑やかに
      振舞ひ酒のうまさ格別
     子燕は高速道路横切りて
      雲の峰へと伸びるビル群
  ウ  ガウディの夢を受け継ぎ黙々と
      一途な愛はきっと本物
     魂がふれあふほどに抱きあひ
      焦ればとけぬ固き靴ひも
     解決に苦難どこまで続く拉致
      耳に残るは遠き潮騒
     神やどる月山に月冴え渡り
      点となりゆくシュプールの涯
     ひと筆に座右の銘を書き上げて
      猫のじゃれあふ縁の暖か
     花満ちて生の讃歌をたからかに
      悠久の地に春の曙

 首 平成14年11月6日  尾 平成14年12月2日   於(FAX音) 

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 『果てはいづこや』の巻
 

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 半歌仙 『果てはいづこや』の巻            田岡 弘 捌

     この道の果てはいづこや草いきれ田岡  弘
      行く手はるかに峰をなす雲多村 遼
     シナリオを一気呵成に書きあげて
      エスプレッソをぐっと濃いめに
     談笑のつづく窓辺の月さやか
      路地の奥にもはやつづれさせ
  ウ  やや寒に龍馬がいそぐ京の町
      おほいなる背に熱きまなざし
     いや燃ゆる恋の炎の限りなく
      さらさらさらと砂の曼荼羅
     脱出はいつのことやらこのデフレ
      イチかバチかで狙ふ逆転
     月影に冴ゆる遠吠え独り聴き
      友の情けにむせる燗酒
     閉ぢられしベストセラーはテーブルに
      フォークソングの流れくる苑
     花の雪浮かべ母なる最上川
      春光満ちて旅立ちの朝

 首 平成14年7月3日  尾 平成14年8月2日   於(FAX音) 

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 『冬瓜や』の巻
 

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 脇起し半歌仙 『冬瓜や』の巻            田岡 弘 捌

     冬瓜やたがひに変る顔の形芭 蕉 翁
      月の淡きにすだく虫の音田岡  弘
     炉火恋しベストセラーに涙して多村  遼
      地味な努力のたふときを知る佐々木栄一
     子燕のやうやく慣れし滑空に
      沖合ひはるか浮かぶ峰雲
  ウ  停まるたび土産の増えるバス旅行
      頭のなかは君でいっぱい
     待ち兼ねし華燭の典はもう間近
      ナイスショットと囃すギャラリー
     タマちゃんの眼の釣針は無事にとれ
      伊賀の銘酒で憩ふひととき
     物陰に忍者の消えて冴ゆる月
      降誕祭に響くオルガン
     学舎の煉瓦造りもなつかしく
      炎と語る窯変の妙
     花浴びて見失ひたる宙の蒼
      風やはらかに靡くスカーフ

 首 平成15年5月12日  尾 平成15年6月 5日   於(FAX音) 

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